ユーディットの関根社長にお会いしました。

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「アメリカもヨーロッパも障害者の差別撤廃法は制定しているのに、制定していない先進国は日本くらいなもの。」

とおっしゃるのはユーディット(情報のユニバーサルデザイン研究所)の関根千佳社長だ。例えば、アメリカのリハビリテーション法508条とは、米国の連邦政府の調達基準に関する法律である。連邦政府が購入するIT機器やソフトは、障害者に使えるものでなければならないという規則がそれだ。最初1986年に施行された際は、罰則も無く、単なる努力義務の域を越えていなかったため、あまり効果がなかった。しかし1998年に公布され2001年に施行された改正版の508条の中では、連邦政府がよりアクセシブルな機器を調達し、Webサイトを提供することは義務となり、違反した場合に職員や市民からの提訴も可能となったため、米国のみならず世界のIT産業に大きな影響を及ぼしている。
対象となるITとは、パソコンのハードやソフト、電話、コピー機、FAX、そしてWebサイトなどが含まれ、この法律がカバーする政府機関の範囲も、連邦政府のあらゆる機関をはじめ、1990年に施行されたAssistiveTechnology Act(通称Tech Act)という法律で政府のファンドを得ている州政府の機関も含まれるため、原則的には米国のほとんどすべての公的機関がその影響を受けると解釈されている。州法でも同様の調達基準を設けるところも増えてきた。

また、ポルトガルなどではたとえ幼稚園でも、パブリックなものであれば、Webサイトはアクセシブルでなければならないという法律が改正508条より以前に制定されているし、イギリスやオーストラリアでもDDAという障害者差別禁止法で、Webサイトのアクセシビリティを規定している。では、日本ではどうかというのが先ほどの回答である。

しかし、関根社長はこう補足してくれた。
「とはいえ、JIS規格のX8341-3が普及したこともあり、日本でも県庁や市役所レベルでは、ほとんどのWeb担当者がアクセシビリティの視点を持っていると考えていいと思います。多くの市民に情報を提供するという立場上、そこは必要な要素ですから。今後のWeb製作会社にとっては、アクセシブルなホームページを作れることが入札の条件の一つになってきていますね。」

一方で、アクセシビリティーは高齢者や障害者の問題だけを解決するものではないということにも触れてくれた。
「X8341-3を守ったアクセシブルなサイトは、検索エンジンにもかかりやすいし、モバイルで画像抜きでアクセスすることも可能です。ハイパーな人にもメリットがあるユニバーサルデザインのサイトになるのです」

また、今後の市場性の大きさにも触れている。「実は18歳以上の障害者の内、50歳以上の方は87.4%なんですよ。」高齢になればなるほど障害を持つ率は高いのだから、障害者と高齢者は非常に重なっているセグメントであり、今後ニーズは厖大だということだ。。さらに最近は(とは言ってもシニア業界では前からであるが)ユニバーサルデザインという概念も浸透してきた。重いニーズを持つ人のために使いやすく作ることは、結果的に障害を持っていない人も使いやすくなるのである。。同社の濱田氏はこう語る。

「アクセシビリティは単に文字サイズを大きくしたり、新しい表現方法を否定している訳でもありません。障害者や高齢者のみならず、より多くの人が利用しやすい Webサイトを作る事を目指しています。一方的な独りよがりにならないように、出来る限り配慮した「おもてなしの心」を持ったWebサイト作りを心がける事が重要なのです。」

参考:株式会社ユーディット

今回の取材に協力して頂きましたユーディットの皆様、及び取材をセッティングして頂いたGREEの三野泰宏様、どうもありがとうございました。

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