台湾シリーズ2:台湾の老人福祉法
キーワード:世界の事例
台湾の町並みを歩く。タクシーはさながら日本の円タクだ。とは言っても
乗ったことはないが、きっとこういう感じだったんだろう、と想像させる。
初乗りは140円程度。メーターもなかなか上がらず、日本では2000円から
3000円かかる距離が400円未満に収まる。
夜中に一冊、台湾に関する285ページの本を読みきる。しかし、中々この
台湾というトコロは(本当は【国】として表記したいくらい)魅力的だ。
町並みを歩くと台湾の働くことへのエネルギーを至るところで感じる。
勉強熱心なバスガイドは、一度、何かの説明を始めると延々と話し出す。
その説明は単純に魅力的である。教え方も非常にわかりやすく退屈しない。
エイジング総合研究センターの吉田成良常任理事の分析によると、定年後の
考え方はアジアと欧米人では大きく価値観が違う、と言う。「働く」ことは、そも
そもヨーロッパでは「使役」。リタイアしたら悠々自適が理想とされるが、アジア
では働くことは広い意味での社会参加であり「生きがい」につながる、と。
納得出来る点も多い。台湾では働く前に二年の徴兵が必要となる。その際の
訓練は凄まじく、バスガイドのソウ氏は「三時間、微動せず、銃を持つ訓練などは
日常茶飯事」であると言う。その際に台湾についてや、仕事について、はたまた
政治について真剣に考えるところはあるのだろう。醸成された社会参加への熱が
各地で感じられる。台湾のコンピュータ産業はアメリカ・日本についで実は三位。
台湾の投票率は80%を越す。
そんな社会参加への熱は、老人福祉法の中にも感じられる。まず、高齢者の扶養
は家族の「責任」である。さらに「罰則規定」までも明文化されている。
97年改正老人福利法によると、法令・契約で扶養する義務がありながら、
虐待、遺棄、自由侵害、自立生活能力がないのに一人で放置する
などが認められる場合は、3万元以上15万元以下の罰金と氏名の公表。
所管機関の家庭教育と補導の義務付けが明確に定められている。
台湾の文化として「面子文化」がある。自分の面子を重視して、責任を果たそうと
する文化である。この面子が傷つくことを台湾の人は強く嫌う。台湾の老人福祉法
の罰則規定の中に氏名の公表が明文化されているのはこの「面子文化」による
ものも強いのではないだろうか。
そうである。面子。要は「そんなこと、かっこわるいじゃん」と言うシンプルな発想。
日本の介護ビジネスの劇的な変遷の中で日本人はその意識を少しずつ忘れて
しまってはいないか、と思う。否、忘れようとしてはいまいか?
高齢者と一緒に過ごすのは当然。親を介護するのは当然。
そんな時代が日本にもあった。台湾のシンプルな「面子文化」は意外にも
日本に大きなテーマを投げかける最良の題材になるのかもしれない。