台湾シリーズ最終章:菩提長青村に見る「介護サービスの台湾流変遷」
キーワード:世界の事例
台湾の菩提長青村は、台湾の大地震の際に出来た仮設住宅地域だ。
それが、変遷を遂げ、自給自足の養護コミュニティーに変わりつつある。
1999年9月21日、台湾の中部地方はM 7.6の大地震に襲われた。この地震で
死者は2000人を超え、5万棟の建物が倒壊し、最も深刻な地震災害となった。
そこにボランティア団体が乗り込んだ。その中には同じく地震で大変な被害を
被った王子華と陳芳姿夫婦の二人も存在していた。
彼らは高齢者が「テントの中で身寄りもなく、一人で暮らしている」ことに着目した。
何とかしてその状況を打破したい、と。
その発想は台湾にはなかなかなかったケアサービスの発想へとつながっていく。
しかし、単純な「システムの輸入」をした訳ではない。「必然の進化」を遂げた点が
台湾の実に優れている点だ。
1.高齢者を一方的な消費者にせず、生産者にもした。
2.年齢に関係せず、年齢を超えた5つの世代が共存している。
3.地域との結びつきの強固さ。
ここに見られるのは高齢者にとって、一番重要な「尊厳」に対して
うまく配慮されていることである。サービスを受けるだけでは、役割が
無くなり、生活が単調になる。いつも同じ介護を受けるメンバーとしか
話せない環境は自分をネガティブに追い詰めてしまう。定期的な来
訪者の欠如は施設内での公共心が薄くなり、家と外の関係が希薄に
なり、ボケてしまう。
それらの問題がここでは自然とゆっくりとした時間の進みで解決している。
近年、高齢者の介護システムとしてのコミュニティー・ケアは徐々に重視されて
きて、1998年に行政院が公布した「老人養護サービス強化方案」によると、「コミ
ュニティ・ケア」は高齢者介護システムの主軸であると指摘されている。
「面子文化」の長所を生かしながら、高齢者自身も望む形での介護サービスの
充実がそこにはあった。日本の介護サービスは急ぎすぎた感がある・・・、というか
急にならざるを得なかったし、そうするべきだった。
しかし、もう一度、立ち止まって考える必要があるかもしれない。日本の介護
サービスは急だったのにも関わらず、どんどん形式化、マニュアル化しようと
している部分がある。
もう少し、「必然の進化」を待つべきだと思う。高齢者の傍にいてもっとリアルな
言葉に耳を傾けるべきだ。単純なシステムの輸入ではなく、必然の進化。
それを求める土盤作りが必要だ。今後の「必然の進化」、それは火を見るより
明らかだ。
それは高齢者が無我夢中になれるエンターテインメントだと私は思う。システ
ムの輸入よりも、今自分が出来る最大のエンターテインメントを供給し、判断を
仰ぐこと。衣食住が揃ったその後に、「遊」が来るとすれば、エンターテインメ
ンフルな状態は逆説的に衣食住を証明する。
世界が早く、シルバーエンターテインメントに気づき、必然の進化を迎えることを
祈る!日本はその先駆けになるべきだ。