特集:なぜ、あのサービスは急成長しているのか。 リクルートキャリアで「サンカク」を手がける秋山貫太氏に聞いてみた。

キーワード:コンテンツマーケティング , 最新WEBトレンド


急成長しているサービスには何かしらの理由があります。それはUI/UXかもしれませんし、SEO戦略やLPなのかもしれません。理由自体はそれぞれのサイトによって異なると思いますが、現場でどんな試行錯誤をしたのかを聞くと、急成長の理由が見えてくるものです。そこで、第一回目の今回はリクルートキャリアの「サンカク」というプロジェクトを取り上げ、責任者である秋山貫太氏をインタビューしてみました。

目次:
サンカクのサービス概要
ボツにした他のネーミング案とは?
ユーザーヒアリングのやり方は「実際の環境と合わせる」
ユーザーの体験価値が上がる場の設定
営業を1件もせずに10社以上の企業を獲得した方法
リリース後に実際にまわしたPDCA内容とは?
「マネタイズ計画は未定」なのに、社内説得出来た理由とは?
まとめ:サンカクの「仮説づくり」の上手さ

サンカクのサービス概要

Q.サンカクとはどういうサービスなのでしょうか?

秋山:サンカクは、ビジネスパーソンが現職を辞めずにベンチャー経営に参画し、社外の経営や事業に触れることができるディスカッション参加サービスです。

Q.サンカクのターゲット層はどんな方を想定していますか?
秋山:大企業に入り、それなりに結果を残しているけど、もっと成長したいと考えている人が多いのではないか、と思ったんです。そういう方は今も努力されていて、ビジネススクールや国内大学のMBAに通っていたり、セミナー・研修への参加、読書などでスキルを磨いています。私自身も社会人になってからは、そういった経験を重ねてきましたし、その価値を感じてはいました。ただ一方で、そこで学べるのはどこまでいってもケーススタディーであって、“リアル感”が感じられないと思う経験もあったんです。シンガポール駐在時代に、まだ立ち上げ期の拠点・事業に携わっていたのですが、仕組みもルールも整っていない状況でした。そこでは、日々新たな課題に直面し、それを早急に解決する。そしてまた新たな壁にぶつかって、それを乗り越えていく、といったように毎日が真剣勝負でした。その経験を通じて感じたことは、「もちろんケーススタディーも大切だけど、それ以上にリアルな経営や事業運営を体験することこそが人を成長させる」ということ。ケースではなくリアルの世界で、正解が無い状況で必死でもがきながら答えを探し、答えを創っていく過程で成長するのではないか、という思いがありました。

そういう意味では、サンカクのターゲット層は自分自身なんです。(笑)そして、こういう思いを持っている人はもっといっぱいいるんじゃないか、と思いました。

Q.オープンしてどの位、応募が発生していますか?
秋山:1企業で2週間で14コンタクトが発生した企業もある位、応募が多く、嬉しく思っています。やっぱり同じように感じている人が多いんだ、と思いましたね。

ボツにした他のネーミング案

Q.サービスをリリースする際にこだわったポイントは何ですか?
秋山:ネーミングに関してはかなりコダワリました。ユーザーが愛着を持ってくれたり、覚えてくれないと意味がないですから。

Q.どんな他の案があったのでしょうか?

例えば、「weekend adviser」、「advisory board」、「B-sket」などがありました。weekend adviserは週末にアドバイスをする人のようなイメージで、「advisory board」は社外取締役をイメージしました。「B-sket」はビスケットと読むのですが、ビジネスの助っ人という意味です。CDのA面・B面になぞらえて、今の職場がA面、ベンチャーがB面というように使い分けたキャリアの提案をしたいという思いもありました。

しかし、これが評判が悪かったんです。

Q.どんな反応でしたか?

B-sketはB-boyぽいというツッコミもありました。ヒップホップのサービスだと思われてしまって・・・。(笑)

ヒアリングは「ユーザーの実際の環境と合わせる」

Q.ヒアリングはどのようにしたのでしょうか。

小さくスピーディーにリーン開発ということは意識していました。そのため、ネーミングを聞くときに長ったらしく説明するのは避けました。実際にユーザーがサービスに触れるときと同じ状態を作り出したかったんですよ。

そのため、サービス概要を30秒で伝えて「ネーミングの候補はこれだけど、どう思う?」と聞くやり方にしました。

Q.確かにユーザーとしてサービスを知るときってそういう状況であることが多いですね。

そうですよね。例えばたまたまFacebookのタイムラインでサービスを目にするような状況のときって、長い説明を聞けないじゃないですか。その状況と同じようにしたかったんですよ。

Q.実際の反応はいかがでしたか?
秋山:実は何度もネーミング候補を聞いてまわりましたが、「これ!」という反応は得られませんでした。「あえて言うとこれだけど・・。」という反応が多かったんです。

しかし、その時のユーザーヒアリングで、
・短くて分かりやすいサービス名
・ 行動に結びついている言葉
・ 分かりやすさや愛着を感じるサービス名
に出来ないかと考え続け、周囲の知人・友人へのヒアリングも重ね、「サンカク」というネーミングをひねり出しました。

サンカクにしてからはフィードバックもガラリと変わり「かわいいじゃん!」「わかりやすい!」などと明らかに反応が良くなりました。

ユーザーの体験価値が上がる場の設定

Q.それはいいやり方ですね。こういった試行錯誤は他にもあったと思うのですが、どんなポイントがありましたか。

秋山:そもそも、企業と個人が会って何をするか、という点は何度も考えました。単純に会うだけだとお互いにとって何をしていいのか分かりません。両者の期待が一致する場の設定が重要だと考えました。

Q.どんな候補がありましたか?

・企業の勉強会・セミナーに参加する
・ディスカッションにサンカクする
・会社の経営会議に参加する

という3つの案がありました。この3つの案を直接ターゲット層となりうる友達など約30人に聞いてまわりました。そうすると、差は歴然でした。

・企業の勉強会・セミナーに参加する 3票
・ディスカッションにサンカクする 26票
・会社の経営会議に参加する 1票

のような結果でした。

ユーザーに聞くと③は「ハードル高過ぎて無理。」という反応。一方、①の勉強会・セミナーだと「つまらない、外の世界を知れた感じはしない。」という反応でした。ヒアリングさせていただいた方々のリアルな反応を見ることで、場の位置づけを設定しやすくなりました。

営業を1件もせずに10者以上の顧客を獲得した方法

Q.掲載企業はどのようにして、獲得されましたか?

秋山:実は営業活動っぽいことはしていないんですよ。掲載されていた10社はもともと知り合いの方々で、サービスを作る段階から、一緒にブレストや情報交換させていただいていました。事業開発の段階から、顧客を巻き込むようにしたんです。

ベンチャー企業の経営者や投資家の方々は、知見も多く、スゴく参考になる意見を言ってくださるんですよね。私は単純に、ビジネスのプロである経営者の意見をどんどん取り入れたほうが良いと思ったんです。相談をしまくった結果、自然と「プロダクトを作って、営業して、受注するという関係」ではなく、「事業開発パートナー」になっていました。

リリース後に実際に行ったPDCAとは?

Q.掲載企業とのパートナーシップはどのように活かされましたか?

秋山:100。

これ、サービス公開後に頂いたフィードバックの数です。通常、お客様からこういったフィードバックはなかなか貰えないと思うのですが、UI/UXに関するアドバイスが100個も来たんです。1つ1つが改善のためのアドバイスになりましたね。

Q.具体的にはどんな改修作業をしましたか?

秋山: 元々、日程調整機能をつけていたんです。ですが10社中、3社中が使いにくいとおっしゃいました。「メール本文でやり取りは出来る。」と言うんですね。そのため、すぐにチームで話し合い、すぐに機能を削りました。開発してくれたエンジニアとしては「せっかく作った機能なのに」という思いはあったと思いますが、、顧客がそう話しているという具体的な言葉は説得力がありました。これが「私がこう思う」ではなく、「顧客やユーザーがこう言っている、感じている」というフィードバックだったからこそ、納得の醸成に効果的でした。

他は「サンカクってコンセプトは面白いけど、何が出来るか分からない」という声が多かったんですよ。そのためチュートリアル動画を制作しました。

「マネタイズは未定」なのに社内調整出来た理由とは?

Q.マネタイズはどのような計画ですか?
実はまだ検討中です。実際の参画企業1社、1社にお話を伺い、様々な案を模索しています。これも同じように、ヒアリングを重ねて答えを出すつもりです。

Q.ということはマネタイズプランがない状態で社内調整をした、ということになりますが、どのようにして調整したのでしょうか?

大企業の社内ベンチャーが失敗する理由はプロセスが多すぎることです。そのため、正式版を出すのではなく、ベータ版を出すということにこだわりました。小さく育てることをとにかく意識したため、大きなプロジェクトを作る、というものにはしませんでした。

逆に目的は明確にしてあります。いきなり、マネタイズではなく、そもそもこういった取り組みをした場合に「ディスカッションが発生するかどうか」の検証を行うという目的という内容で稟議を通しました。

仮説を価値仮説と成長仮説の2種類に分けているんです。「そもそもユーザーに価値があると判断してもらえるか」、というものと「その後ビジネスとして成長させることが出来るか」という点に分けているんですね。今は価値仮説まではうまくいきましたが、今後成長仮説の検証をしていこうと思います。

まとめ:「サンカク」、仮説づくりの上手さ

サンカクでは、小さな仮説をとにかく聞いてまわるスピード感を大事にしているようです。机上の空論で悩むよりも実際のユーザーを捕まえて話を聞くほうがより優れた仮説を生み出すことが出来ます。PDCAをいかに高速にまわすか、言葉だけで聞くと当たり前ですが、これを実践するためには常にアンテナを張り巡らせておく必要があります。さらに、「間違い」を認める勇気も必要です。仕様変更には、社内・社外を問わず、痛みが発生します。しかし、「クライアントの本音」を引き出しておくことによって、痛みが緩和される面もあったのでしょう。サンカクは誰よりも自分自身で外部の参画をうまく使っているのかもしれません。

サンカク :https://sankak.jp/
リクルートキャリア :http://www.recruitcareer.co.jp/

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